P-MACは地雷除去支援や被害者への支援を進めると同時に、これらがどんな性質を持っている兵器で、どのような構造の元で世界に広がっているのかについても伝える活動をしています。
ここでは地雷の特徴や被害者数、最近の使用状況、日本や世界の取り組みなどについて紹介しています。
地雷の特徴「被害者の多くは戦争と関係ない一般市民」
地雷は、地中や地上に設置され、人や車両が踏んだり触れたりすることで爆発する兵器です。自分たちの土地の周辺に埋めることで敵の侵入を防いだり、敵が通るであろう場所で待ち伏せ攻撃するために使われます。他の兵器とは異なる地雷の大きな特徴を4つ紹介します。
1.「人を殺すこと」を目的としない兵器
多くの地雷は、兵士の手足を失わせることを目的に作られています。そうすることで、傷ついた兵士を他の兵士2~3人が病院まで運ぶため、戦える敵の兵士の数を減らすことができます。
また、手足を失い苦しむ姿を他の兵士が見ることで、戦う気力を失わせることができます。地雷は身体的にも精神的にもダメージを与える兵器です。
2.残り続ける
一度埋められると、戦争が終わっても誰かが踏むか地雷除去するまで残り続けます。
3.人を選ばない
地雷は攻撃する相手を選びません。そのために被害者の7割以上は戦争とは関係のない一般市民です。
戦後、農作業中や買い物のため外出中、通学途中などふつうの生活の中で地雷被害に遭う人々、子どもたちがいます。
4.安い
地雷は1つ300円程度。戦費が少ない軍隊にとって使いやすい兵器です。1970~90年代に各地で頻発した内戦で多くの地雷が使われ、今も約60カ国に地雷が埋まっています。
地雷の被害「多くの子どもが被害にあっています」
地雷埋設国
60の国と地域に地雷が埋まっています。その多くがアジアとアフリカにあります。(2021年10月現在)
<特に地雷汚染が多い国と地域(地雷汚染地域が100㎢以上)>
アフガニスタン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カンボジア、クロアチア、エチオピア、イラク、トルコ、ウクライナ、イエメン
被害者数
(地雷、簡易地雷、クラスター爆弾や他の不発弾と戦争中に遺棄された爆弾による被害を含む)
2020年の1年間に判明しているだけで54の国と地域で7,073人が被害にあいました。そのうち、2,492人が死亡し、4,561人は負傷、20人は不明です。
詳細が判明している被害者のうち80%は一般市民で、その中で年齢が判明している被害者の50%が子どもでした。
1999年には9,228人だった被害者数は以降、毎年若干の増減はありますが減少を続けていました。
2013年には最も少ない3,457人になりました。その後、被害者数が急増し、2016年には8,605人に達しました。
2020年の7,073人は2016年と比較すると減少していますが、2013年と比べると2倍以上となり、高い被害者数が続いています。
すでに紛争が終結した国では被害者数が減少しています。いっぽうで、紛争や大規模な暴力が続いている国々で被害が増えています。
紛争地などで被害者数の記録をとることは難しく、このほかにも報告されていない被害者が多数いると推測されます。
また、対人地雷全面禁止条約に加盟していない国では、被害者数をまとめるシステム自体がないこともあります。(下のリストでは、シリアとミャンマーが条約未加盟国。) そのため、実際にはより多くの被害者がいると思われます。
<2020年に被害者数が100人以上報告された国>
シリア(2,729 人)
アフガニスタン(1,474 人)
マリ(368人)
イエメン(350人)
ミャンマー(280人)
ウクライナ(277人)
ナイジェリア(226人)
コロンビア(167人)
イラク(167人)
ブルキナファソ(111人)
最近の地雷の使用
2020年中旬から2021年10月までのあいだ、政府軍による地雷の使用が確認されたのは、ミャンマーの1か国です。
また、少なくとも6ヵ国(アフガニスタン、コロンビア、インド、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン)の非政府武装グループが地雷を使用しました。
地雷の生産国
中国、キューバ、インド、イラン、ミャンマー、北朝鮮、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、米国、ベトナム
地雷の種類
世界では約340種類の地雷が存在するといわれています。その一部を紹介します。
対戦車地雷
サイズは直径30~50cmと大きく、地中に埋めて使われます。車両や戦車などを爆発させる目的でつくられたため、150kg以上の重さがかかると爆発します。
対人地雷
1.爆破型地雷
直径は約5~15cm。 地中に埋めて使われます。どのくらいの重さで爆発するかは種類によって異なりますが、多くは数キロの重さで爆発します。 構造が単純で大量生産がしやすいです。
2.破砕型地雷
地中に埋めず地表の物陰などに隠して使用します。 爆発で地雷本体が細かく砕けて、周囲20~30mに時速100kmで四方に飛び散り、その破片で標的を殺傷します。
種類によっては内部に鉄くずや鉄球が詰めてある物もあります。 ワイヤーを安全ピンにつなげておき、標的がワイヤーに足をかけると安全ピンがはずれ、起爆装置が作動します。
3.跳ね上げ型地雷
地雷本体が地面からはね上がり、地表から1~2mの空中で爆発します。 他の地雷とは違い、人の胴体・内蔵・頭部に大きな被害を与えるのが特徴です。
4.指向性地雷
地表に設置し、リモコン操作やワイヤーを引き抜くことで爆発します。地雷の前方向のみに爆発して、中の鉄球が広範囲に飛び散ります。
5.散布型地雷
航空機やヘリコプターなどからばらまく地雷です。それぞれが小さく目立たない色をしているため、気づかずに踏んでしまいます。子どもが興味を持つような形をしているため、地雷とは知らずに拾い上げて被害にあうことも多いです。
6.スマート地雷
自己破壊装置、または自己不活性化装置付きのためスマート(かしこい)地雷と呼ばれます。一定時間後に自爆したり、爆発しないようになります。しかし、これが正しく動作する確率は7割以下という報告もあり、本当に無力化しているかどうかは爆発させてみないと分かりません。
簡易地雷
紛争地で手に入りやすい砲弾や地雷、起爆装置などを使って即席で作られたものを簡易爆弾(IED)と言い、その中で地雷と同様に人や車両が踏んだり触れたりすることで爆発するものを簡易地雷(IM)と呼びます。
近年、非政府武装クループにより使われ、紛争地で大きな被害を出しています。
対人地雷全面禁止条約「市民がつくった条約」
対人地雷全面禁止条約(通称オタワ条約)が1997年に成立、現在164カ国が参加しています。32ヵ国が未加盟です。(2022年1月末時点)
<対人地雷全面禁止条約の主な内容>
・対人地雷の使用、貯蔵、生産、移譲の禁止
・埋設地雷の除去、被害者支援を進めること
・これまで貯蔵していた地雷の廃棄
・地雷被害国への地雷対策のための資金や技術の支援
日本の地雷対策
かつては地雷を製造し、自衛隊が約100万個の地雷を持っていました。1999年にオタワ条約に加盟し、2003年には保有していた地雷の廃棄作業を終えました。
地雷除去のための技術開発や訓練に使用するための地雷は持つことができるため、15,000個の地雷を残していましたが、2018年末にはその数が898個まで減少しています。
また、地雷埋設国への地雷除去や被害者支援などに資金援助を行っています。2020年には約43億円を20の国・地域と国連機関に援助しています。
2020年、日本は世界で5番目に多くの支援をしています。最も多くの支援はシリアに対してで、全体の22%にあたる9億1,500万円が使われました。
<2020年に日本が援助した国・地域と機関>
シリア、イラク、ソマリア、スリランカ、レバノン、アンゴラ、アフガニスタン、カンボジア、パレスチナ、ラオス、スーダン、ナイジェリア、ウクライナ、パラオ、ジンバブエ、カメルーン、ベトナム、南スーダン、チャド、アルメニア、国連地雷対策サービス部(UNMAS)
参考:「地雷リポート」神保哲生著(1997)、「Landmine Monitor 2021」ICBL発行
(写真:内田和稔、ピースボート)
P-MACでは、より詳しく地雷問題を知ってもらおうと「なんだろう地雷出前教室」を行っています。ご依頼いただければ、カンボジアの地雷原を訪れたスタッフが、地雷問題についてわかりやすく出前授業します。
1990年代には多くの人々が日々地雷被害に遭っていました。その状況を知った世界中のNGOなどがネットワークNGO「地雷禁止国際キャンペーン (ICBL)」をつくり、国々を巻き込んでオタワ条約を成立させました。
その功績が認められ、ICBLは1997年にノーベル平和賞を受賞しました。世界の4分の3以上の国が地雷を禁止することで、新たな地雷埋設は年間数か国にとどまっています。
ICBLは毎年各国の地雷の状況をモニタリングし、非締約国にはオタワ条約への参加を呼び掛けています。