こんにちは。ピースボートスタッフの讃井悠介です。
ピースボート地球一周の船旅 Voyage118(2024年8月出航)の中で行なった「カンボジア地雷問題検証ツアー」の準備のため、カンボジアに行ってきました。
現在P-MACでは、地雷被害者のシッティングバレーボールチームを支援するための募金キャンペーンを9月30日まで行なっています。
このシッティングバレーボールチームのトレーニングも見せてもらいましたので、ご報告します。
アンコール障がい者協会(AAD)を訪問
現地NGO「アンコール障がい者協会(AAD)」は地雷被害者を支援するために地雷被害者によって設立され、今は障がい者スポーツに力を入れています。
暑い太陽が照りつく中、シェムリアップの町はずれにあるAADを訪問しました。
迎え入れてくれたのは、設立者のセム・ソワンタさん。
私が8年前にAADを初めて訪問した時、そしてその数年後に日本で会った時と変わらず優しい笑顔のソワンタさんに再会することができました。
ソワンタさんは政府軍の兵士だった内戦中に、地雷の被害に遭い、両脚を失いました。大変な苦労をしながらAADを設立して、多くの地雷被害者を支えてきました。
過去にはシッティングバレーのカンボジア代表選手として国際試合に出場していたこともあります。
シッティングバレーのトレーニング
私が訪問したのは、シッティングバレーのトレーニングが始まる直前でした。この日集まったのは12名。
みなさん、地雷の被害やケガや病気などで足や手に障がいを持った方です。年代は様々で、20代から60代の方までいました。
多くは、仕事をやりながら時間を見つけてこの場所で練習をしています。みなさん、自分でバイクを運転したり、トゥクトゥクなどでこの場所に来ているそうです。
シッティングバレーはパリパラリンピックでも競技種目に採用されているくらい世界的にはプレーされていますが、カンボジアではまだチーム数も少ないそうです。
コーチもやって来て、さっそく練習が始まりました。
まずはそれぞれのコートでトスとサーブ練習。そのあとで、お互いのコートの一番遠いラインに並んで座り、打ち合います。そこから試合形式での練習が始まりました。
コーチのアドバイスの声を真剣に聞きながら、トレーニングをしていました。
シッティングバレーは座ったままのプレーなので、見ていると動ける範囲は狭く感じるので難しそうですが、選手はパスを繋ぎながら相手のコートにうまくボールを落としていました。
選手とコーチにインタビュー
練習の合間に、4名の方にお話を聞きました。
チエン(CHEANG)さん
1996年、当時22歳で軍隊に入っていた時の戦いで地雷を踏み、右足をなくしました。
スポーツが好きで昔はバレーをやっていたこともあるし、2023年4月には日本のハーフマラソンに参加したこともあります。
シッティングバレーは3年前からやっています。現在は、建設現場で働きながら練習に通っています。
「シッティングバレーを通じて、ここで仲間と出会い、一緒に練習したり遊んでいることがすごく楽しい」と言っていました。
体を動かすのが好きというのがプレーを見てても伝わってきました。常に笑顔で練習しているチエンさんから、本当にここでは楽しい時間を過ごしているんだなと実感しました。
ソウン・サット(Soun Sat)さん
兵士だった1986年に左腕を失いました。サットさんが16歳の時です。
昔はアンコールワット前でお土産を売っていましたが、規制が厳しくなってそれが出来なくなりました。
収入がなくなって生活が大変だった時にソワンタさんに助けてもらったことをきっかけにAADのメンバーになりました。
サットさんはスポーツが好きな少年でした。それは地雷被害にあってからも変わらず、今もバレーボールやマラソンを続けています。
「バレーやマラソンは年に1回くらいしか試合に参加する機会がなかったので、シッティングバレーは沢山試合ができて嬉しい」と言っていました。
サットさんも、ずっと笑顔いっぱいで練習に楽しく取り組んでいました。ここで友人たちとスポーツできることに喜びを感じているのが伝わってきました。
ロスチェット(Roschet)さん
ロスチェットさんは現在25歳。地雷被害者ではなく、5歳の時に木から落ちて右足を怪我して障がいが残りました。
ロスチェットさんはコーチの知り合いで、最近AADのシッティングバレーチームのことを知りました。この日はロスチェットさんにとって、練習に参加する初めての日でした。
「シッティングバレーの選手になりたい。これから練習を頑張っていきたい」と話してくれました。
やる前から前向きで、そして美容師の職業訓練も受けていて、そちらも頑張りたいと言っていました。まっすぐに夢に向かう姿勢が印象的でした。
サングクレム(Sem Vireak Sangkrem)さん
コーチとして関わっているサングクレムさんは現在27歳。
「AADのチームを作った時は選手が少なかったけれど、多くの方が参加するようになってうれしいです。
選手たちは障がいを持っていることで仕事の幅が狭まるし、練習をしたいと思っていても、やはり自身の生活面を優先しないと生きていけません。
ここに来るための交通費もかかるので、練習にメンバー全員が集まれることはありませんが、実力は伸びてきています」
生活が大変な中でも練習に励む選手たちを見て、チームの環境をさらに良くして、1人でも多くの選手が参加できて強いチームを作れるよう、指導を続けています。
難しい課題もあります
トレーニングは平日の早朝と夕方に数時間ずつ行なっていますが、コーチの言葉にあったように、なかなか全員がそろうことはありません。
選手たちは本当はもっと練習に来たいと思っていますが、多くが貧しい生活を強いられています。家族や自分自身の生活のためにも仕事を優先しなければなりません。
また、ソワンタさんは言います。「以前は食事の提供もしていたが、今は経済的な理由でそれができていない。食事のサポートができれば、練習に来る選手はより増えるだろう」
そしてソワンタさんは、敷地内に新しく建物を建てて選手の寮を作ってあげたいという夢も話してくれました。
いつか世界に羽ばたく姿を見たい
私がシッティングバレーの練習を生で見たのは初めてでした。
みなさん、最初に挨拶したときは笑顔で迎え入れてくれましたが、いざ練習が始まると真剣な表情で取り組んでいて、コート内ではどんどんボールが飛び交っていました。
シッティングバレーの練習に参加できることを楽しみにしていることが、ひしひしと伝わってきました。
そして何よりAADを通じて、ここで出会ったメンバーに会えるのが嬉しいと言っていたのが特に印象に残っています。
シッティングバレーをすることが、貧困や差別、健康の問題などを抱えて生きる彼らの心の支えになっていました。
選手たちは、今10月にある全国大会に向けて練習しています。大会で実力が認められれば、カンボジア代表として来年の国際大会に出場することもできます。
AADの選手たちにシッティングバレーを通じて、カンボジアから世界に羽ばたいて欲しい!そう強く思いました。
讃井悠介
今回視察したAADのシッティングバレーチームを支援するために、募金キャンペーンを立ち上げました。9月30日までに30万円を目標に集めています。詳細やご寄付については下のリンク先をご覧ください。ご協力をよろしくお願いいたします!
カンボジア地雷被害者のシッティングバレーボールチームを支援したい!