ピースボート地球一周の船旅 Voyage116で開催した地雷問題検証ツアーの最後の報告です。参加者のお一人、“おかも”さんが書いてくださいました。
今回は、義足の作成や歩行訓練などを行なうセンターと地雷被害者の社会復帰を支援するNGOを訪問した際の様子をお伝えします。
シェムリアップ州立リハビリセンター
こちらはシェムリアップ州の社会福祉局が運営する義肢装具(義足など)の作成、歩行訓練を行うリハビリセンターです。
私達は職員の一人にお話を伺い、施設内の見学をしました。
センターに来る患者は月に200人程度。障がいをもつ方に義手や義足を無料で提供しています。(実質の制作費は膝下の義足だと300米ドル、膝上からのものだと400米ドルほどします。)
作った義足は定期的にメンテナンスが必要です。メンテナンスにかかる時間は修理だけであれば2〜3時間。
大人であれば年に1度の調整で10年程使い続けることが出来るそうです。子どもは成長が著しい為、半年に1度程度の調整が必要だそうです。
以前は多くが地雷の被害者でしたが、現在は年配の方は糖尿病や高血圧、若者は交通事故でこのセンターを訪れる割合が増えています。
ポリオ(脊髄性小児麻痺)などの障がいをもった乳児も訪れる事がありますが、予防接種の普及により減ってきているそうです。
また以前はセンターを訪れる人の60%は農作業をしている人達でした。杖をついた状態では農作業が出来ない為、義足が必要だからです。最近は事務仕事をする人も増えています。
義手は指が曲がるのでバイクの運転も可能になります。
ここに来る患者さんは、1日1ドル程度の食事代さえ支払えばこのセンターで生活しながら義手・義足の完成を待つ事ができます。自宅からここまでの交通費も出ます。
元々知らないもの同士でも一緒に過ごすうちにお互いの境遇を共有したり、戦争の時の話をする等して仲良くなるそうです。
センターの課題のひとつは、義足を作れる職員が不足していることです。このセンターには義足製作の資格を持っている方は1人しかいません。
義足を提供するセンターはカンボジア内に12箇所ありますが、資格を取った後に国内でこの仕事に就く人は多くなく、海外に働きに出る人が多いそうです。
義足が作られる過程を見学した後は、通訳の方を介して、義足を使っている方と交流しました。
その中で、ある方に「日々過ごしていてどんな時に楽しいと感じますか?」と質問したら「何もない」と返ってきて言葉に詰まってしまいました。
義足を作った次の日からその人は幸せになるわけではない。
その人が子どもの頃から見てきたもの、生活環境、教えられたこと、培われた価値観…。
ひとりの人間が心に平和を宿す為には様々な要素があるんだろうと考えました。
それでも、義足があることで自由に歩ける様になり、お仕事も出来るようになったそうです。
突然遠くから訪ねてきた私たちの質問に答えてくれ、少し見せてくれた笑顔から、心優しい人だなと感じました。
アンコール障がい者協会
最後に、地雷被害者を中心とした障がい者の社会的・経済的自立支援を行うNGO「アンコール障がい者協会(ADD)」を訪れました。
初めに、設立者のソワンタさんに協会を設立するに至った経緯を話していただきました。
内戦中に地雷で両脚を失い、時代の波に翻弄されながらも常に先を見据えた行動をしてきたソワンタさん。
今後英語が必要になると感じれば、こっそり英語塾の外から授業を聞いて勉強したり、自分に出来ることを増やしていきました。
まわりには自分と同じような障がい者の方々が当たり前のようにいた時代。独学を続け、少しずつ英語が出来る様になっていた為、外国のメディアや観光客に障がいについて聞かれたときに説明することが出来ました。
外部の関心が障がい者に向けられるようになってきた頃、何か仕事につなげられたら障がいを持っている人を助けられるのではないかと考えるようになります。
その後シェムリアップ州に移ったソワンタさんは障がいを持っている人達を集めて、お土産の販売、遺跡で行う楽器演奏の活動を始めました。
また、仕事の無い人には職業訓練センターで音楽演奏か木工彫刻の訓練の機会を与えました。
日本を含めた海外からの支援もあり、活動は活発になっていき、障がいを持っている方の子どもに向けた学校の設立もされたそうです。
他にもシッティングバレーボール(座った状態で行うバレーボール)や車イスバスケットボールなどのスポーツ活動、農業、地方に井戸を掘る活動、義足や車イスの提供等、障がいを持っている方のサポートをしていました。
コロナ禍で活動が大変な時期には、ピースボートからの継続的な支援があったので本当に感謝している、と伝えてくださいました。
それでもカンボジア全体では、今でも障がいを持っている方への支援が行き届いておらず、まだ困っている人はいるとおっしゃっていました。
お話の後に、協会が力を入れている障がい者スポーツのひとつ、シッティングバレーボールを体験しました。
車イスを使ってる方もツアー参加者も混ざって、座った状態でバレーボールを行いました。
ボールを落とさないように腕を伸ばしたり転がったり。パスが繋がって得点が入った時には思わずハイタッチ!
障がいがある無し関係なくただ楽しい時間を過ごすと、心の距離が一気に近くなった様に感じました。
また、協会に通う方が作った雑貨の販売もしていました。購入すると今後の活動の支援になります。
私は地雷の破片が入っているブローチを購入しました。ブローチの下の方の青色の部分が地雷です。
この可愛らしいブローチに地雷が埋め込まれているのを見ると、その小ささに反して急にブローチがずっしりとして見えました。
このブローチを身に付ける度に私は今回の旅の空気、平和の難しさとそれでも懸命に歩むカンボジアの人々の姿を思い出すでしょう。
このツアー、そしてピースボートの旅をきっかけに、今後も世界に目を向けて、平和について考え、行動していこうと思います。
文:おかも
コメントを残す