ピースボート地球一周の船旅 Voyage118 内で開催したカンボジア地雷問題検証ツアーの報告第2弾です。
参加者のお一人、牛草文音さんが報告会の内容をまとめてくださいました。今回は地雷除去現場の様子をご報告します。
カンボジア地雷対策センター(CMAC)地雷除去活動
まずCMAC(Cambodian Mine Action Center)についてご紹介します。
CMAC は、カンボジアの政府機関で、現在2,200名のスタッフがいます。年間予算が約10億円で、そのうち90%以上が国連機関、各国政府、国際NGOからの援助で賄われています。
基本的な活動内容は、こちらです。
①カンボジア国内に残る地雷や不発弾の調査、情報収集
②地雷、不発弾の除去作業
③除去作業に関する訓練、スタッフの育成
④地雷、不発弾の危険回避に関する教育
みなさんは、数十年前に埋設された地雷のある現場というと、どんな状況を想像されますか?さらに、人を殺傷する道具である地雷をどうやって除去するのか、想像できますか?
今回、訪問したのはこの地図にあるクーレーン(KULEAEN)という地域で、私たちが宿泊した町・シュムリアップから車で3時間くらいです。
そこで、CMACはこの図面にある東西約200m、南北約600m、面積12万平方メートルのエリアを対象として除去作業を行なっていました。計画では、この範囲を16日間で処理すると説明されていました。
作業エリアに入る前に、防護ベストとヘルメットを着用します。
着用してみると、ずしっと重さを感じました。気温と湿度が高く、立っているだけでも全身汗だくになりました。
.地雷の除去現場というと参加者の多くが視界のひらけた、広々とした野原を想像していましたが、実際に案内されたのは森の中でした。
エリアの中は地雷除去が終わって、安全が確保されたエリアと、未処理で危険が残っているエリアが混在しています。
森の中は木の根があり、足元も悪いです。それにつまづいて転倒した先に地雷があることを想像すると、かなりの緊張感でした。
除去現場にはこの絵のような様々なポールが立てられていて、色の違いや塗り分け方によってそのエリアの特性がわかるようになっています。
地面に隠れた地雷や不発弾を探すにはいくつかの方法があります。基本的な方法は、人間が金属探知機を使って地雷や不発弾の金属反応を見つける方法です。
この場合、作業を始める前に表面の草を取り払い、地表を露出させる必要があります。
訓練された犬を使って、地雷や不発弾に含まれる火薬の匂いを探る方法も採用されています。犬に20mくらいのリードを繋ぎ、探査エリア内を縦方向に往復させて火薬の臭いを探させます。
犬にはGPSの受信機が取り付けられており、火薬の匂いを嗅ぎつけた場所を受信して記録します。その場所を後で掘り返し、地雷を見つけます。
犬は、雑草を気にせず藪のなかを進んでいくので、草刈りの手間が省けます。
今から30年以上前、地雷はうっすらと地表から顔を出すように埋められましたが、カンボジアには雨季と乾季があります。長い年月の間に、埋められた地雷が雨で流されたり、上から土砂が堆積して地中に埋まったりしています。
日中は30度を超える猛暑と蒸し暑い環境の中、このような大変で地道な作業を幾度となく繰り返し、少しずつ少しずつ安全エリアを拡大していきます。
見学後に参加者から集めたアンケートの中に、一番多く書かれていたのが「地道な作業」という言葉でした。しかも、この地道な作業は、必ずしも成果として報われる保証はありません。
多くの手間と時間と命のリスクをかけて掘り出した金属が爆発の可能性のない火薬の匂いが染み付いた砲弾の破片であったり、使い古した農機具だったりすることもあります。
そして残念なことに、今までに14名のCMACスタッフが、作業中の事故で亡くなっています。
こうした地道な作業を繰り返し、一歩ずつ国土の安全性を広めていったCMACのスタッフに対して、本当に頭の下がる思いでした。
最新の設備としては、草刈り、探査、現場での爆破処理を一台でこなす大型の機械も開発されているようです。ただ、機械価格が高額で多くの台数を現場投入できる状況ではないようでした。
CMACのホームページによると、カンボジア全土には内戦中に400万個の地雷が埋められたそうです。
CMACの方のお話では、1992年のCMAC創設以来地道な処理作業を続けてきた結果、今のところ2030年に作業が完了する見込みだそうです。
スタッフの安全を確保しつつ、1日も早くカンボジアの国内全体が安全エリアになることを祈りたいと思います。
Vol.3へつづく
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