第101回ピースボート「地球一周の船旅」(2019年4月~8月)に参加して、地雷問題検証ツアーでカンボジアを訪問した「ほたて」こと植原絵理香 さんの体験をご紹介します。
心に引っかかっていたカンボジアの地雷問題
ピースボートは高校生時代から知っていたものの遠い存在だと思っていました。10年後に新卒で入った会社を辞めて、これからどうしようか?と選択肢を探している時、改めてピースボートのポスターを見て、地球一周してみたいと思い、「ピースボートセンターよこはま」でボランティアスタッフ(ボラスタ)を始めました。当時はポスター貼りはもちろん、P-MACに対しても人一倍思い入れが強く、活動的だったと思います。
そもそもわたしがカンボジアや地雷について考え始めたのは、専門学校に通っていた頃に見た「僕たちは世界を変えることができない」という映画がきっかけでした。大学生がカンボジアに小学校を建てるまでの奮闘記で、内戦やエイズ、地雷などカンボジアが抱える負の部分も描かれていました。初めて見た時、本当に衝撃的で、無知で力のない自分にもどかしさやなんとも言えないモヤモヤした気持ちでいっぱいでした。
平和に生きる自分と同じいまこの時、この瞬間にも地雷の脅威と隣り合わせで生活をする人がたくさんいるんだという現実が、真実味のない事実としてわたしの中に残りました。 その後すっかりピースボートの事は忘れて社会人として生活する道を選んでいましたが、カンボジアのことは忘れることができずにいました。
わたしにできること!「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」
ボラスタを始めようとピースボートの説明会に行った時、初めてP-MACのことを知って「わたしでも力になれそうな活動を見つけた!」と心から思いました。ただ、わたしが通い始めたのは95回クルーズが出港した直後(2017年8月ごろ)で多くのボラスタが乗船したために、「ピースボートセンターよこはま」にはあまりボラスタがいませんでした。
少しずつボラスタが増えてきた頃にみんなを誘って「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」として地雷除去のための街頭募金をしたり、映画上映会をしてみんなで学ぶ機会をつくって仲間を増やしながら活動していました。それまでは2、3人で駅前に立つことも当たり前だった募金活動も10人前後に増えたりして目標金額に向けて頑張っていました。
わたしたちが集めた募金が使われている現場を見たい
募金活動をしていると街行く人になぜいま地雷なのかとか、なぜカンボジアなのかとか、募金活動をしていること自体への意味を問われる場面が多くあって、自分と向き合うことにも繋がりました。それまでは、募金活動自体が目的になっていたような気がします。
「わたしが本当にしたいのはこの集められた募金がどうやって使われて、どう変わるのかだよな」と気づいて、カンボジア地雷問題検証ツアーに参加を決めました。そこで暮らす人たちがどうやって生きて、感じているか自分の目で見たかったんです。
わたしは2019年4月20日に出航した第101回ピースボート「地球一周の船旅」に乗船しました。この船旅の中でおこなわれたカンボジア地雷問題検証ツアーは、カンボジアで5日間過ごして、地雷除去の現場や地雷被害者を支援する団体、「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」で集めた募金で地雷除去をおこなっている村などを訪れました。
地雷を目の前にして感じたこと
実際に地雷除去が行われるエリアを訪れた際、想像以上の壮絶な現場に言葉が出ませんでした。目の前にあった地雷はちっぽけな物体で、これが大きな被害をもたらすとは……。「悪魔の兵器」と言われるこの安価な武器で、被害を受ける人のことを思うと何かしなくてはと思うのに……。命の危険がある除去作業を行う「カンボジア地雷対策センター(CMAC)」の方々から、誇りを持ってこの仕事をしていると聞いた時、自分にも同じことが出来るかと考えさせられました。
本当にあと一歩、手を伸ばしたら触れてしまうくらいの近い距離にある地雷。遠く自分とは関わりのないように感じていた存在。目の前にしてみてもこれがそれほど脅威があるとは思えない、何気ない物のように思えて、かえって鳥肌が立ちました。それほど当たり前のようにそこにあったからです。
地雷被害者の方たちが教えてくれたこと
地雷被害者などに義足をつくって歩行訓練をしているリハビリセンターでは、患者さんたちから偏見によって障害者への差別があること、それによって仕事がなかなか見つからないとのお話を伺いました。それでも生きて行くためには働かないといけない、働きたい、と前向きにリハビリされていました。
長く辛いリハビリ生活や自分の身体、境遇と向き合う姿を見て、次第に自分が恥ずかしく思いました。無意識に彼らが暗い人生を送っているかのように接し、話してしまっていたからです。笑顔を見せながら努力を重ねる明るい姿にこちらが励まされているような気持ちになりました。
自分が同じ立場になった時、わたしはここまで出来るだろうか。「こんなに努力しているのに社会に受け入れてもらえないなんて」と、もどかしさや悔しさでいっぱいでした。戦争がなければ……、地雷が無ければ……、考えてもこの現実は変わらないのに、考えずにはいられませんでした。
今もなお爪痕の残るカンボジア。本当の意味での戦争の終わりはいつなんだろうと考えさせられました。
現場を訪れる大切さを実感した旅
カンボジアでの短く濃い時間は、これからの人生ずっと向き合っていくことになるだろうと感じる問題と体験の連続でした。実際に自分の目で見て、耳で聴いて、感じたことで、現場を訪れることの重要性を実感できました。自分の可能性を広げたり、活力が得られる。そんな貴重な経験が出来たと思います。
わたしは一人ひとりの思いが大きくなることで、平和な世界になっていくのではないかと考えています。わたしは本当にこのツアーに参加出来て良かったです。もっと多くの人にこの現実を知って感じて欲しいと思います。
ほたて
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