第101回ピースボート「カンボジア地雷問題検証ツアー」報告Vol.1

2019年4月20日に出航した第101回ピースボート「地球一周の船旅」で、地雷問題検証ツアーの参加者がカンボジアを訪れました。カンボジア内戦の歴史を伝える場所や、地雷除去現場、地雷被害者を支援するNGO、P-MACが支援を続ける村を訪れ、現地の方々の声を直接聞き交流しました。地雷問題が今も続くカンボジアの現状と、ともにつくる未来について考える貴重な時間となりました。スタッフの堀場万生によるツアー報告第一弾です。

のどかな村にある地雷除去の現場へ

カンボジアには、1960年代の隣国で起こったベトナム戦争の激化や、1970年代から20年以上続いた内戦の影響で、今なお地雷がおよそ400~600万個残っているといわれています。数百円で作れる安価な武器として安易にばらまかれた地雷は、誰かが踏むか地雷を除去するまで地中に残り続けます。

アンコールワットで有名な都市・シェムリアップから車で約2時間、整備されていない道を通って、タイとの国境近くにあるバンクト村に行きました。この村には、タピオカの原料であるキャッサバいもやカシューナッツをつくって暮らしている人々がいます。そんな日常生活の近くにも地雷はまだ残っています。

この村ではカンボジア地雷対策センター(CMAC)による地雷除去がすすめられていました。訪れた時の気温は38度。汗が止まらず服の色が変わってしまう程に日差しがジリジリと肌を刺して痛いくらいでした。

対人地雷との対面

地雷除去活動に関するレクチャーを受けてから、実際に除去現場を見学させていただくことができました。その際、着用義務があると手渡された防護服は意外と軽装で、守られているのは胴体部分だけ。ヘルメットに付いた顔面のプロテクターによって視界は悪くなり、着用中はまるでずっと頭のてっぺんから押さえつけられているかのようにとても重く感じ、私たちは歩くのがやっとの状態でした。

地雷探知のための7㎏ほどする機材を持ち、炎天下で一日中作業をしている地雷除去員の方々が日々接する環境の過酷さを痛感しました。

先導してくれた除去員の方が「これが、今日さっき見つかった新しいものだよ」と指さした先に埋まった、初めて目にした本物の地雷。あと一歩、手を伸ばしたら触れてしまうくらいの近い距離に緊張感が走ります。「携帯を落とさないように」とその方が口にした何気ない一言に鳥肌が立ちました。地雷は直径10cmくらいの本当にちっぽけな物体で、近づいて見てみないとよく分かりませんでした。

私たちは、この見学の前日に「アンコール障がい者協会」という地雷被害者を支援するNGOを訪問していました。そこで私たちを迎えてくれた創設者のセム・ソワンタさんは地雷により両脚を失いました。彼は地雷事故の直後に自殺しようとしました。失望のあまりに「もはや死んでしまいたい」と、かつてソワンタさんに願わせた小さな地雷が目の前にありました。

中央の車椅子の男性がソワンタさん

1時間程の見学の中で、その区域では2つの地雷が新しく発見されました。「戦争は終わったけれど、本当の戦争の終わりっていつなんだろう」と思わずつぶやきました。

「終わらない戦争」戦後20年以上続く復興の道

レクチャーから除去現場の案内まで私たちを先導してれたCMAC職員のトム・チャンセライさんは、「人が埋めてしまったことだから。私たちは生きていくために、前に進むためにやらないといけないのです。地雷が埋められて住む土地がなくなってしまった人を助けたいという気持ちからこの仕事を始めて、気づけばこんなにも時間が経ってしまいました」と語ってくれました。

1996年からこの職に従事し、かれこれ23年の経験があるベテラン職員である彼の表情や語り口からは、内戦終結から20年以上経ても「終わらない戦争」の根深さと、復興の道のりがいかに地道で時間のかかるものであるかをひしひしと感じました。しかし、同時に、運転中に辺りを指さしながら「ここもかつて地雷原でしたが、今は農作地になっています。こんなにスムーズに車を走らせる区域が増えたんですよ」と、少しはみかみながら話すチャンセライさんの誇らしげな横顔は印象的でした。

平和をつくるためにゆるぎなく前に歩んでいく人達がいて、カンボジアはたしかに復興を続けています。昨今、CMACは「この経験をカンボジアだけでなく、世界中の地雷被害に遭っている現場で私たちのノウハウを共有し、世界の平和のために貢献したい」と次の一歩を踏み出そうとしていると聞き、胸が熱くなりました。

地雷がなくなってほしいという願いがもっと世界中に広まってほしい。そのために私たちができることを行動にうつしていきたいと思いました。


第二弾はこちら→101回クルーズツアー報告Vol.2

堀場万生

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