ピースボートVoyage115「カンボジア地雷問題検証ツアー」報告 Vol.2

ピースボート地球一周の船旅 Voyage115で開催した地雷問題検証ツアーの報告第2弾です。参加者のお一人、かほこさんによるレポートです。

今回は地雷被害者との交流と、地雷除去現場を紹介します。

ツアー報告第1弾はこちらから

アンコール障がい者教会(ADD)

右がアンコール障がい者協会(AAD)代表のセム・ソワンタさん

アンコール障がい者協会とは、地雷被害者を中心とした障がい者の社会的、経済的な自立支援を行う現地NGOである。

主な活動としては障がい者への職業訓練、社会復帰のための精神的なサポート、障がい者の人権問題についての啓発を行っている。

訪れた施設では、協会の方が作られた木工彫刻品や繊維用品の販売もしていた。

また、スポーツにも力を入れている。というのも、大会での賞金が本業とは別の収入源となりうるからだそうだ。

訪問した日には私達も混ざって、座って行うシッティングバレーボールを行った。

車椅子バスケットボールも以前は行っていたそうだが、壊れた車椅子の修理ができず、現在は活動できていないそうだ。

ピースボートとしては、経済的な自立を目的とした木工彫刻のトレーニングプロジェクトなどに対して資金面で協力してきた経緯がある。

また、昨年は協会の代表であるセム・ソワンタさんが交通事故に遭い、手術や輸血が必要な状態となった。

その際、ピースボートは募金やメッセージを募り、それらを送る形で治療の支援をしたとツアーに同行していたピースボートスタッフの大下さんより伺った。

協会の代表であるソワンタさんは、政府軍の兵士だった内戦中に地雷被害に遭い両足を失った。

内戦時から現在までの半生を聞き、内容とは対照的に穏やかな口調や表情で話される姿が印象的だった。

また、カンボジアでは障がいへの偏見や差別があり、特に地方ではそれが色濃く、障がいを隠すため家に引きこもって生きている人や、障がい者支援について知らずに必要な支援を受けられていない人がいることをお話しされた。

協会では、支援が必要な人々の所まで行って、協会の活動内容を説明しているそうだ。

ここでの交流を通して様々な思いが自身の中に沸き起こった。まず、シッティングバレーボールは、炎天下であることを忘れるくらいに楽しみ、笑い声がたくさん飛び交った。

船の中や寄港地でも感じることだが、話す言葉や生きてきた背景や環境が違っても、一緒に体験して一緒に笑い合えることができるのだと改めて感じた。

それと同時に、普段と違う状態でボールを捉えることや、ボールを取るために動けないことから不便さやもどかしさを感じた。

短時間で限局的だが、当事者として生活する擬似体験の場にもなった。

また、現地のガイドさんやピースボートの大下さんに聞いたところ、カンボジアでは日本にあるような障害年金や障害者手帳のような国の支援制度がないと聞き大変驚いた。

内戦が終わって30年程度で、インフラ整備もままならず、国として課題が山積みであるのは理解できる。

しかし、国がNGOや当事者に頼りっきりではなく、公助がもっと手厚くなれば生活しやすくなるのではないかと感じた。

そして、NGOや国外からの支援も状況に応じた支援でなければ、せっかくの支援も無駄になってしまう可能性があることを学んだ。

例えば、壊れている車椅子も再度新しいものを支援として送ったとしても、それを管理する人や修理する人が現地にいなければ、使えない車椅子が増えるだけになってしまうということだ。

ついつい善意から手を出したくなるが、まずは現地のニーズを正確に捉えることと支援サイドができることをうまくリンクさせないと有意義な支援にならないと感じた。

そして、障がいへの偏見や差別。これはカンボジアに限ったことではないと考える。

自分が地雷を踏んでしまっていたら…、自分の家族や友達が脚を失ってしまったら…といった想像力を持ち、互いに手を差し伸べることのできる心のゆとりと思いやりを持った社会でありたいと感じた。

地雷除去の現場

地雷除去団体「カンボジア地雷対策センター(CMAC)」が行う地雷除去の現場を見させていただいた。

CMACには様々な地雷除去チームがあるが、犬を使ったチーム、ネズミを使っているチーム、潜水チームには女性も働いており、女性の雇用は全体の10%(地雷除去員が5%、事務員が5%)と伺った。

炎天下で、ヘルメットと防護具を着けて立ってるだけで辛いのに、その上金属探知機など機械を持って作業するのは過酷な労働条件だと感じた。

まずは、動物による地雷探知の見学から始まった。犬もネズミも訓練されているからかスムーズに作業を行っている印象を受けた。

犬やネズミは火薬のにおいを探し、においがした箇所を人が金属探知機を用いて再度確認してから地面を掘るという流れで作業を進める。

犬だと懐いている人だけが取り扱えるが、ネズミはそうでない人でもできるという利点がある。しかしネズミは1面(5m×20m)の作業が終わったら休憩を取ったり、暑さに弱いため活動時間が限られるそうだ。

金属探知機だけを使って地雷を探す方法が多く使われているが、これは地雷以外の金属にも反応してしまう。犬やネズミは火薬でなければ反応しないからより早く進められる。

ただ、地雷探知に使われる犬やネズミは火薬に触れるという作業内容上、通常よりも寿命が短いと聞き、なんだか複雑な思いがした。それについてCMACの方に質問したが動物愛護団体等からは特に批判はないのだそう。

そして、実際の地雷爆破の見学を行った。今回爆発させたのは8個で、内訳は対戦車地雷6個と、対人地雷2個であった。

これらはたった3日間で見つけたと聞き、大変驚いた。最近この地雷原では3日で8個ペースで見つかっているが、以前他の現場では3日で100個の時もあったと聞いてさらに驚いた。

爆破作業は、爆破音が大きくて炎も出てキノコ型の煙があがって、しばらく口が開いたままとなってしまった。

ただただ怖かった。これはアンコール障がい者協会(AAD)代表のソワンタさんが話していた通り、人は何メートルも吹き飛ぶよなと実感した。

カンボジアでは2005年頃までは年間800人以上が地雷によって怪我をしたり亡くなったりしていたが、現在は除去が進んだことや地雷に関する教育も進んでいるためか年間40人程度に減少しているそう。

しかし、今年は農地を耕すことで地雷が出てくる機会が多くなっていると聞いた。

戦争を乗り越えて今後発展しようと思っても、何十年前もの地雷が今も妨げになっているのだと知り憤りを感じた。

地雷による被害は少なくなってはいるものの、まだまだ地雷が見つかっていることの恐怖を感じ、今後も作業を進めていけるよう、遠い国からでも支援できることをしていきたいと感じた。

Vol.3へつづく

文:かほこ

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