小さな穴を掘って地雷を置き、安全装置を取り去ったらかるく土をかぶせる。
地雷を埋めるのはとても簡単です。でも、それを取り除くには大変な労力と時間、お金が必要です。地雷が埋められて長い年月がたつにつれて、どこに、どのような地雷がうまっているかもわからなくなります。地雷の爆破事故が起きてはじめて、その場所が地雷原だったとわかることも多くあります。今、世界の多くの国で埋まっている地雷は、ほとんどが数十年前に埋められたものです。戦争が終わっても地雷の除去はなかなか進まず、今も1日に10人が被害にあっています。
地雷を探すための技術
これまでに地雷を探すための様々な技術が研究されてきました。その中で、実際に長年使われているのは金属探知機、犬、大型機械を使ったものです。植物、ミツバチ、放射線、ロボット、ドローンなどを使った地雷探知や除去の方法がこれまで考えられていますが、研究段階であったり、実際の地雷除去現場では使えないものも多くあります。
カンボジアで実際に使われている方法
多くの地雷が埋まるカンボジアでは、日々、地雷除去活動が続けられています。3つの方法で地雷を探しています。それぞれの特徴を見ていきます。長所と短所を2つずつあげてみました。
金属探知機
世界でも最もよく使われている方法です。このような風景を写真や映像で見たことある人も多いのではないでしょうか?
長所
・もっとも確実に地雷を探すことができる
・木々が生い茂る土地、斜面、小さな面積など様々な土地で使うことができる
短所
・手作業で少しづつ作業するため、時間がかかる
・地雷だけでなく金属全てに反応するため、一つ一つ地面を掘って確認しなければいけない
地雷探知犬
火薬のにおいを嗅ぎ分けられるように訓練した犬を使った方法です。犬と人間がパートナーとなって地雷を探します。
長所
・火薬のにおいで探すので、確実に爆発物を探すことができる
・金属探知機に比べて早い
短所
・風が強いとにおいが流れていってしまうため、探知が困難
・長時間の高温や直射日光を避けるなど、犬の体調にあわせて作業する必要がある
地雷除去機
こちらは大型の機械で地面をかき回し、地雷を探すのではなくてその衝撃で爆破させます。日本の企業が開発した機械が使われています。
長所
・広い面積を短時間で処理できる
・機械を動かす人は防弾ガラスで守られているため、安全が確保できる
短所
・地面深くに埋まった地雷は処理できない
・大型のため、広くて平らな土地でないと使えない
たとえば…
P-MACが地雷除去支援をしている「コーケー村」という村があります。この村はアンコールワットよりも古い時代に都がおかれた場所で、多くの貴重な遺跡が村中に残っています。この村では、大型の地雷除去機を使うことができません。除去機を使うと、地雷はその場で爆破させてしまいます。その爆破で、付近にある遺跡などを破壊してしまうおそれがあります。また、この村には豊かな自然が残っています。できるだけ大きく育った木を切り倒さないためには金属探知機を使うことが有効になります。
気候によっても左右される
少し前にネズミを使った地雷除去の方法が紹介されて話題になりました。
火薬をかぎ分けるネズミ、地雷除去に活躍/ナショナルジオグラフィック
アフリカのいくつかの国では、すでに成功しているようですが、カンボジアでもこのネズミを使って地雷を探せないかと地雷除去機関「カンボジア地雷対策センター(CMAC)」でテストが行われています。ここで使われているのはアフリカオニネズミという中央アフリカに住む大型のネズミです。カンボジアの地雷原でこのネズミを使ってみると、地雷を見つけ出せる確率が低くなってしまいます。そして、このネズミは普段、比較的涼しい場所に住んでいる種類です。高温多湿のカンボジアでは、昼間にネズミを働かせることができません。涼しい地域では、このネズミを使った方法が有効かも知れませんが、気温の高い地域では使うことができないようです。
その土地にあわせた方法が必要です
戦争中であれば地雷が1つや2つ残っていても、それによって兵士の被害が出ても仕方がないと考えられます。でも、戦争が終わった後の地雷除去は、人々の安全を守り、その土地を使えるようにしなければなりません。それは、100%に近い確率で地雷を探し出す必要があります。残念ながら、100%確実に地雷を探し出せる方法はまだありません。それでもできる限り全ての地雷をなくすために、地雷除去活動が多くの国でおこなわれています。
その土地に一番あった方法で、一番確実に地雷を見つけることができる方法を使うことが大事です。これからも実際の地雷原で使える、新しい技術が生み出されるかもしれません。技術の研究、開発、試験を得て、膨大な時間とお金をかけて考え出されたものでも、実際の地雷除去現場で使えるのは、ほんのわずかです。そう考えると、本当にこのような兵器は2度と使って欲しくないと思います。
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