第92回ピースボート地球一周の船旅でおこなった地雷問題検証ツアーのレポート第3弾です。テーマは「未来へ向かって」です。今回はその前半、地雷被害者への支援についてです。
【未来へむかって(前半)】
地雷被害者は手足を失うなどしてこれまでの仕事ができなくなったり、周囲から差別されるなど、社会復帰できず貧困問題を抱える被害者が今も多くいます。地雷被害者をはじめとした障がい者を支援する団体を訪れました。これまでカンボジアの過去・現在を学んできました。ここからはこれからのカンボジアについて考えていきたいと思います。
カンボジアン・ハンディクラフト・アソシエーション(CHA)~技術提供だけではない支援~
地雷被害者やポリオ患者をはじめとした女性の障がい者を経済的・社会的に支援するプノンペンにあるNGOです。シルクを使った様々な商品をつくるための縫製技術や小規模ビジネスを学ぶことができます。訓練を受けている障がい者はここで共同生活をしています。
私が印象的だったのはスタッフの表情の暖かさです。CHAでは精神面のサポートにも力を入れているとのこと。女性たちは差別を受けたり、自ら引きこもってしまったりと絶望的な精神状態でCHAに来る人も多いそうです。
「生きていれば“生きがい”が必ずあると伝えている」と話してくれたCHA代表のキム・タさんのあたたかい言葉はCHA全体の雰囲気ににじみ出ていました。
最後にはサプライズで中島みゆきさんの「糸」を全員で歌ってくれました。私たちも一緒に合唱し、短い滞在でしたがすごく心に残る時間となりました。
アンコール障害者協会(AAD)~被害者自らが立ち上がる~
軍人時代に地雷で両足を失くしたセム・ソワンタさんが運営している職業訓練センターです。ソワンタさんは地雷の被害を受けた後、一時は物乞いをせざるを得ない状況まで追い込まれました。しかし本の販売等で生活を立て直し、自身と同じような苦境にある障がい者を支援するためにこの団体を作りました。
AADでは木工彫刻の技術をトレーニングして販売したり、障がい者による伝統楽器の演奏団をつくり演奏する活動など、障がい者の社会復帰に向けた支援を行っています。
また、ソワンタさんはピースボート主催の講演会のゲストとして日本に来日した経験もあります。
その時のお話の中でこんな言葉がありました。
「日本は世間の障がい者に対する目や扱い、工夫が素晴らしい。」
トイレや電車に乗る中で感じたそうですが、果たして日本では障がい者に対しての環境は十分に整っているでしょうか?
この言葉を聞いてカンボジアの環境がいかにまだ改善が必要か感じました。
シェムリアップ州リハビリセンター(PRC)
シェムリアップ州の社会福祉局が運営する技師装具の作成、歩行訓練を行うセンターを訪れました。地雷被害者、ポリオ患者、交通事故などで手足を失ったり、骨の異常のため歩行が困難な障がい者に、義足や義手を作成してリハビリを行う施設です。
また、多くの場合は貧困のため自分で費用をまかなうことはできないためPRCでは患者の経済状況に応じて費用の一部負担や無料で支援を行っています。
カンボジアでは障がい者に対する公的な支援が整っていません。でも、多くの現地団体などが活動を続け、少しずつですが、人々が再び社会に復帰して、自身で生活できるようになっています。
そして、次回のレポート「未来へ向かって(後半)」では、私たちが支援をしている村の小学校開校式をご報告します。
文:富岡あゆみ 写真:内田和稔
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